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冬眠しないクマはなぜ現れる?2026年研究と冬の出没・遭遇対策を徹底解説

白石 結愛 白石 結愛 • 更新: • 公開: • 読了約 26 分
目次

「冬眠しないクマ」とは、冬眠に入らず、あるいは通常より遅く冬眠に入り、雪の中や人里で活動を続ける個体を指す表現だ。日本のクマが一斉に冬眠をやめたわけではない。しかし、2025年に北里大学が公表した雪上を歩くツキノワグマの映像や、2026年1月に東京農工大学などの研究チームが発表した脂肪蓄積の研究からは、従来の冬眠のイメージだけでは説明できない生態が見えてきた。

暖冬による冬眠時期の変化、ドングリの凶作、冬眠前の脂肪蓄積、人里に残された柿や栗などの食べ物。これらは互いに関係しているものの、必ずしも同じ結果をもたらすわけではない。2026年秋の自治体による最新の出没情報も踏まえ、冬眠しない理由から冬の遭遇リスク、家庭や山で実践できる対策まで詳しく解説する。

【冬眠しないクマとは?】冬でも活動を続ける個体がいる理由

冬眠しないクマ

冬眠しないクマとは、一般的な冬眠開始時期を過ぎても活動している個体や、冬眠期間が短い個体、いったん冬眠に入っても途中で覚醒する個体などを指す。

ここで注意したいのは、雪の中でクマが目撃されたからといって、必ずしもそのクマが冬眠を完全に放棄したとは限らないことだ。冬眠開始前の活動、冬眠穴への移動、冬眠中の覚醒など、複数の可能性がある。

冬眠しない理由は大きく分けて3つ

クマの冬眠行動に影響する要因は、主に次の3つに整理できる。

1.気温や降雪などの環境条件

冬眠の開始時期は、気温や降雪、食物資源の状況などによって変わる。暖冬で積雪が少なく、活動できる環境が長く続けば、通常より遅くまで活動する個体が現れる可能性がある。

環境省も、クマの活動時期は地域の気候条件によって異なり、暖冬などによって前後することを説明している。ただし、気温が高ければ必ず冬眠しないという単純な関係ではない。

2.秋に蓄えた脂肪と栄養状態

クマは冬の間、基本的に食物を摂取せず、秋までに蓄えた脂肪を使って生命を維持する。そのため、冬眠前に十分なエネルギーを確保できなかった個体では、冬眠に入るタイミングや身体の状態に影響が出る可能性がある。

北里大学獣医学部の研究グループも、降雪前に十分な栄養を蓄えられなかった場合、冬眠に入れないケースがあると説明している。

3.人里に食べ物が残っている

山の中で餌が少なくても、人里に柿や栗、生ゴミなどがあれば、クマにとっては魅力的な食物資源になる。こうした食べ物を見つけた個体が人間の生活圏に近づき、活動を続ける可能性がある。

特に、人里で食べ物を得られる経験をしたクマは、同じ場所に再び現れる可能性がある。冬眠するかどうかだけでなく、周囲に何を食べられる環境があるかも重要な判断材料になる。

冬眠しないクマは珍しい異常個体なのか

冬眠時期のずれや短縮は、必ずしも異常行動を意味しない。クマは生息地域、年齢、性別、栄養状態などによって行動が異なる。

また、冬眠中のクマは完全に意識を失っているわけではない。人間のように長時間深く眠り続ける状態とは異なり、体温や代謝を低下させながら、周囲の刺激に反応して覚醒することがある。

したがって、冬眠しないクマの存在を考える際には、「冬眠するか、しないか」の二択ではなく、冬眠開始の遅れ、期間の短縮、途中覚醒まで含めて理解する必要がある。

【クマの冬眠時期と期間】ツキノワグマ・ヒグマで違いはある?

日本に生息する代表的なクマは、本州・四国の一部に分布するツキノワグマと、北海道に生息するヒグマだ。どちらも冬眠するが、地域の気候や餌の状況によって開始・終了時期には違いがある。

ツキノワグマの冬眠時期

ツキノワグマは、一般的に11月下旬から12月頃に冬眠を開始し、3月中旬から5月頃に活動を再開する。

冬眠期間はおおむね4〜5か月程度だが、地域や個体によって変わる。多くの個体は12月末までに冬眠に入る一方、1月上旬まで活動する個体も確認されている。

東京都環境局が紹介する東京のツキノワグマの生活サイクルでは、3月下旬から4月中旬頃に冬眠から覚める個体が多い。妊娠しているメスは冬眠中に出産するため、子グマを連れたメスは冬眠穴から出る時期が遅くなる傾向がある。

ヒグマの冬眠時期

北海道に生息するヒグマも、基本的には12月から3月頃まで冬眠する。

札幌市のヒグマ生態資料によると、秋の10〜11月は冬眠に備えて食物を大量に食べる時期で、12〜3月は冬眠と出産の時期に当たる。妊娠したメスは冬眠中に出産し、春に冬眠穴から出るまで母乳で子グマを育てる。

ヒグマもツキノワグマも、冬眠中のメスが出産・育児を行う点は共通している。

冬眠穴はどこに作られる?

クマの冬眠穴は、必ずしも地面に掘った洞穴とは限らない。

環境省のクマ類の生態資料によると、冬眠場所には岩の隙間、樹洞、倒木の根元、根上がり部分などが利用される。個体によっては自分で地面に穴を掘ることもある。

こうした場所は、外敵や厳しい気象条件から身を守り、冬の間に蓄えたエネルギーを効率よく使うための重要な休息場所だ。

冬眠穴らしき場所やクマの足跡を見つけても、近づいて確認するのは危険である。冬眠中のクマが刺激を受けて覚醒する可能性もあるため、痕跡を見つけたらその場を離れたい。

冬眠の仕組みは普通の睡眠とは違う

北海道大学の下鶴倫人氏による2023年の研究論文「クマの冬眠の生理・代謝機構」では、クマは冬眠中に基礎代謝率を通常活動期の約25〜50%まで低下させ、蓄積した脂肪を主なエネルギー源として利用すると説明されている。

北里大学の解説によれば、冬眠中は心拍数や代謝が大きく低下し、排尿や排便もほとんど行わない。食べ物や水分を補給しなくても、身体に蓄えたエネルギーを利用して数か月を過ごせる仕組みになっている。

このような生理的な適応があるため、クマの冬眠は単なる長時間の睡眠とは異なる。冬眠期間の長さだけでなく、身体の代謝や脂肪の使い方まで理解することが、冬の行動を読み解く鍵になる。

【北里大学の雪上撮影】2025年の映像が示した冬のツキノワグマの実態

冬眠しないクマへの関心を高めた資料の一つが、北里大学獣医学部の研究グループが公表した雪上歩行の映像だ。

同大学のグリーン環境創成科学科に所属する岡田あゆみ教授の研究グループは、2025年1月中旬、青森県の八甲田山系で雪深い山中を歩くツキノワグマを自動撮影装置で記録した。

この成果は2025年11月17日に北里大学獣医学部の公式情報として公表された。

積雪のある山中で撮影されたクマ

今回の撮影場所は、普段からクマの爪痕や糞がよく観察される場所だった。研究グループによると、これほど積雪がある時期に、クマが雪上を歩く様子を記録したのは初めてだったという。

注目すべきなのは、単に冬のクマが撮影されたことではない。一般的に冬眠していると考えられる時期に、雪深い山中で実際に活動している姿が記録された点にある。

この映像は、積雪がある地域でも、すべてのクマが同じ時期に冬眠しているわけではないことを考えるうえで貴重な資料となった。

北里大学が指摘した2つの可能性

北里大学の解説では、冬眠に入らない背景として、次の2つの状況が挙げられている。

  • 降雪前に十分な栄養を蓄えられず、冬眠に入れない場合。
  • 秋の栄養状態が良好でも、食べ物を得られる環境が残っており、冬眠に入らない場合。

この2つは、同じ「冬眠しない」という現象でも、原因が正反対になり得ることを示している。

前者は冬眠に必要なエネルギーを十分確保できない状況であり、後者は冬眠を急ぐ必要がないほど食物が得られる状況だ。

研究グループは、温暖化や食物資源の変動が背景にある可能性にも触れている。ただし、今回の撮影だけで温暖化が原因だと断定できるわけではなく、今後の継続的な調査が必要だとしている。

雪上撮影から分かること・分からないこと

今回の映像から分かるのは、積雪期にもツキノワグマが活動していたという事実だ。

一方、撮影されたクマがその冬を通じて冬眠しなかったのか、冬眠開始前の移動だったのか、あるいは一時的に活動していたのかまでは、この映像だけでは判断できない。

つまり、北里大学の撮影成果は「クマは冬眠しなくなった」という証明ではなく、冬眠時期や活動パターンに個体差があることを示す重要な観察記録として位置付けるのが適切だ。

【2026年最新研究】東京農工大学が解明したクマの脂肪蓄積とドングリの関係

2026年のクマ研究で特に注目されるのが、東京農工大学などの国際共同研究チームによる脂肪蓄積の研究だ。

東京農工大学は2026年1月5日、「クマのボディメンテナンス術~1年間の脂肪蓄積量の変動から見たツキノワグマの栄養戦略~」という研究成果を発表した。

研究成果は学術誌「Mammal Study」に2025年12月20日付でオンライン掲載されている。研究チームには、島根県中山間地域研究センター、東京農工大学、ノルウェーNord大学、国立環境研究所の研究者が参加した。

島根県のクマ651頭を調査

研究チームが分析したのは、2003〜2018年に島根県で有害捕獲などによって捕殺されたツキノワグマ651頭だ。

測定対象は、次の3種類の脂肪である。

  • 皮下脂肪:皮膚の直下に蓄えられる脂肪。
  • 内臓脂肪:腎臓周辺の脂肪量を指標として評価。
  • 骨髄脂肪:大腿骨の骨髄内にある脂肪。

この3種類を季節ごとに調べることで、クマがいつ脂肪を蓄え、どの部位からエネルギーとして使用しているのかを分析した。

冬眠中だけでなく春から夏も脂肪が減少

研究結果では、クマの脂肪量は春から夏にかけて減少し、秋の10〜12月に増加する傾向が確認された。

特に注目されるのは、冬眠前の秋と冬眠後の春を比較した結果だ。

  • 皮下脂肪:約62%減少
  • 内臓脂肪:約39%減少

冬眠中のクマは、蓄積した脂肪をエネルギー源として利用していることが、数値からも確認された。

加えて、春から夏にかけても脂肪は減少する。夏の脂肪量は春と比較して、内臓脂肪が72%、皮下脂肪が87%、骨髄脂肪が88%の水準まで低下していた。

冬眠を終えたからといって、クマの栄養状態がすぐに回復するわけではない。むしろ、春から夏も食物資源が限られ、体内のエネルギーを消費し続ける厳しい時期だと分かる。

クマはどの脂肪から使うのか

研究では、クマが皮下脂肪を優先的にエネルギー源として使用し、その後、内臓脂肪や骨髄脂肪を利用する可能性も示された。

この仕組みは、冬眠中だけでなく、春から夏にかけての食物不足にも対応するための栄養戦略と考えられる。

研究・観察データから分かる関係性の整理
研究・機関 確認された事実 冬のクマを考えるうえでの意味
北里大学・岡田あゆみ教授の研究グループ 2025年1月、八甲田山系で雪上を歩くツキノワグマを撮影 積雪期にも活動する個体がいることを確認
東京農工大学などの国際共同研究チーム 島根県のクマ651頭を対象に3種類の脂肪量を分析 冬眠前の脂肪蓄積と冬眠中のエネルギー消費を解明
北海道大学の下鶴倫人氏による研究 クマの基礎代謝率が冬眠中に低下する仕組みを整理 冬眠は通常の睡眠とは異なる生理的適応であることを説明
環境省 暖冬や地域差によってクマの活動時期が前後すると説明 全国一律の冬眠開始日を設定できないことを示す
兵庫県・愛知県などの自治体 2026年度のドングリの豊凶と出没状況を公表 地域ごとの餌資源の違いが冬眠前の行動に関係する
ドングリが凶作だと翌年まで影響する

東京農工大学の研究で特に重要なのは、ドングリの豊凶がその年だけでなく、翌年のクマの栄養状態にも影響するという発見だ。

前年にドングリが不作だった場合、翌年の内臓脂肪や骨髄脂肪は、前年が並作または豊作だった場合と比較して少なくなる傾向が確認された。

その影響は翌年の秋まで続くことも示されている。つまり、クマの栄養状態は、その年の秋の食べ物だけで決まるわけではない。

森林の実りが悪かった年の影響が、翌年の冬眠準備にも残る可能性があるということだ。

意外な発見:人里に出るクマが必ずしも空腹とは限らない

この研究には、一般的なクマの出没イメージを見直す重要な結果もある。

ドングリが不作だった年に集落などへ出没し、有害捕獲されたクマは、十分な脂肪を蓄え、栄養状態が良好な個体がほとんどだった。

その背景には、前年のドングリの結実が並作または豊作だったことに加え、集落内に残された柿や栗などの食べ物が存在していたことがある。

研究チームは、こうしたケースでは単純な空腹よりも、集落に残された魅力的な食物がクマを誘引した可能性を指摘している。

この結果は、「山の餌が少ないから人里に来るクマは、みんな痩せている」という考え方が正しくないことを示している。人里への出没対策では、クマの栄養状態だけでなく、食べ物を得られる環境をなくすことが重要になる。

【暖冬・餌不足・人里の食べ物】冬眠しない理由を正しく見極める

冬眠しないクマの原因を考える際、特に混同されやすいのが暖冬と餌不足の関係だ。

気温が高いこと、山の餌が少ないこと、人里に食べ物があることは、それぞれ異なる形でクマの行動に影響する。

暖冬なら必ず冬眠しないわけではない

暖冬によって雪が少なくなれば、クマが活動できる期間が長くなる可能性はある。

しかし、冬眠は気温だけで決まるものではない。食物資源の状況や身体に蓄積した脂肪、地域の環境なども関係する。

環境省は、活動時期が地域の気候条件によって変化すると説明しているが、暖冬だけを冬眠しない原因とすることはできない。

餌不足は冬眠を遅らせるとは限らない

ここには少し複雑な関係がある。

北里大学は、冬眠前の栄養不足によって冬眠に入れない可能性を指摘している。一方、2026年5月に科学技術振興機構の科学技術情報サイト「サイエンスポータル」が紹介したクマ研究では、ドングリが豊作の年には食べ物を求めて12月頃まで活動する一方、凶作の年には食物を探しても得られず、11月初旬に冬眠に入るケースが説明されている。

つまり、山の餌不足は必ずしも冬眠の遅れにつながらない。餌が見つからなければ早めに冬眠へ向かう個体もいる一方、栄養不足によって冬眠の準備が整わない個体も考えられる。

加えて、人里に食べ物が豊富にあれば、森林の餌不足とは別の理由で活動を続ける可能性がある。

クマが人里で狙う食べ物とは

クマは植物を中心に食べる雑食性の動物だ。季節によって食べ物は変わり、秋には冬眠に備えてドングリやクリなどの堅果類を大量に食べる。

人里で特に注意したい誘引物は次のとおりだ。

  • 柿・栗:収穫されずに残った果実や、地面に落ちた実。
  • 生ゴミ:屋外に置かれた家庭ゴミや食べ残し。
  • 農作物:収穫されずに残った野菜や果実。
  • 果樹園の果実:管理されていない果樹や放棄果樹の実。
  • キャンプ場の食料:テント周辺に放置された食べ物やゴミ。

クマは嗅覚が非常に発達しており、食べ物の存在を見つける能力が高い。

一度人里で食べ物を得る経験をすると、再び同じ場所に近づく可能性もある。2026年5月のサイエンスポータルの記事では、東京農工大学のペク・スンユン特任助教によるGPS調査を紹介し、人間の食べ物を得た経験が、その後の行動に影響する可能性を解説している。

クマが人間を積極的に食べ物として狙っているという単純な構図ではない。人間を避ける習性がある一方で、食べ物を得られる場所を学習し、人間の生活圏に近づくことがあるという点が重要だ。

2026年秋のドングリ調査と地域別の状況

2026年は、各自治体が公表したドングリの豊凶調査にも地域差が見られる。

兵庫県では2026年9月11日、今秋のドングリ類が全体として凶作との調査結果を発表した。

内訳はコナラとミズナラが大凶、ブナが豊作で、3種類全体では凶作という結果だった。

また、2026年8月末時点のクマの目撃・痕跡件数は495件。前年同時期の342件を上回り、過去5年間の平均299件の約1.65倍となった。発表時点では人身被害は発生していなかったが、県は冬眠前のクマが餌を求めて人里に出没する可能性に注意を呼びかけた。

一方、愛知県が2026年10月8日に公表した調査では、県全体のドングリの実りは並作だった。ただし、調査地点ごとに凶作から豊作までばらつきがあり、地域によっては人間の生活圏への出没が増える可能性が指摘されている。

北海道森林管理局が2026年10月5日に公表した調査協力結果では、ヒグマの食物となるミズナラのドングリとヤマブドウが不作傾向だった一方、ブナは豊作または並作、コクワは並作だった。

このように、全国の山林が一律に餌不足になっているわけではない。樹種や地域によって食物資源の状態が異なり、それがクマの移動や人里への接近にも影響する。

2026年のデータを見る際は、全国平均だけでなく、実際に暮らしている地域の出没情報とドングリの調査結果を確認することが重要だ。

【冬のクマ出没と遭遇対策】12月以降も油断できない理由

クマは一般的に12月から2月頃まで冬眠するが、地域差や個体差があるため、冬になったからといって出没リスクがゼロになるわけではない。

特に冬眠開始前の11月から12月にかけては、最後の食いだめをする個体がいる。積雪期に活動する個体や、人里の食べ物に誘引される個体にも注意が必要だ。

冬にクマと遭遇しやすい場所

次のような場所では、冬眠前後のクマとの遭遇に注意したい。

  • 森林と住宅地の境界付近。
  • 柿や栗などの果樹が残っている住宅周辺。
  • 山林に隣接する農地や耕作放棄地。
  • 食べ物や生ゴミが管理されていないキャンプ場。
  • クマの足跡や糞、爪痕が確認されている山道。
  • 冬眠穴が存在する可能性のある山中の岩場や樹洞周辺。

北海道森林管理局は2026年10月5日、ヒグマが冬眠するまで広範囲で活動することがあり、これまで出没していなかった地域でも遭遇する恐れがあると注意喚起している。

山に入る前に実践したい5つの対策

環境省や自治体が推奨する対策を踏まえると、山に入る際には次の行動が基本になる。

  1. 最新の出没情報を確認する。都道府県や市町村が公表するクマの目撃情報を事前に確認する。
  2. 単独行動を避ける。できる限り複数人で行動し、周囲への注意を怠らない。
  3. 音で人間の存在を知らせる。クマ鈴やラジオ、声などを使い、突然の遭遇を防ぐ。
  4. 見通しの悪い場所に注意する。沢沿いや藪の中、強風や雨天時は特に警戒する。
  5. クマ撃退スプレーを準備する。必要な地域では入手方法や使用方法を事前に確認する。

鈴を持っていれば絶対に安全というわけではない。状況に応じて音を出し、クマの痕跡がある場所には不用意に近づかないことが大切だ。

自宅周辺でできるクマ対策

クマの人里への接近を防ぐには、住民一人ひとりによる食べ物の管理も欠かせない。

  • 柿や栗などの果実は、木に残さず収穫する。
  • 地面に落ちた果実も放置しない。
  • 生ゴミや野菜・果実の廃棄物を屋外に置かない。
  • 家庭菜園や果樹園には必要に応じて電気柵を設置する。
  • クマが身を隠せる住宅周辺の藪や下草を適切に管理する。
  • 早朝や夕方に外出するときは周囲をよく確認する。

特に重要なのは、クマに食べ物を与えない環境を維持することだ。クマが一度でも人里で簡単に食べ物を得られると、その場所が再び訪れる対象になる可能性がある。

もし冬にクマと遭遇したらどうする?

冬眠していると思っていたクマに突然遭遇した場合でも、慌てて走って逃げてはいけない。

環境省が推奨する基本的な行動は次のとおりだ。

  • 絶対に近づかない。
  • 写真を撮ろうとして距離を縮めない。
  • 落ち着いてクマの様子を見ながら、ゆっくり後ずさりする。
  • 無理に通り抜けようとせず、クマが立ち去るまで待つ。
  • 大声を出したり、背を向けて走ったりしない。
  • 荷物や石などを投げて刺激しない。

万が一襲われた場合、環境省はうつ伏せになり、首・顔・腹部を守る行動を推奨している。クマ撃退スプレーを携帯している場合は、事前に使用方法を確認したうえで使用する。

クマを目撃した場合や足跡、糞などの痕跡を発見した場合は、近づいて調査せず、自治体や警察など地域の担当窓口に情報を伝えることも大切だ。

【プロの結論】冬眠しないクマへの対策は食べ物の管理から

北里大学の雪上撮影と東京農工大学の脂肪蓄積研究を合わせて考えると、冬眠しないクマへの対策は、単に気温や冬眠時期を監視するだけでは不十分だと分かる。

クマの活動を左右するのは、身体に蓄えたエネルギーと、周囲に存在する食物資源の組み合わせだ。山の実りが悪くても人里に食べ物があればクマを誘引する可能性があり、反対に森林で食物が得られなければ早期に冬眠へ向かう個体もいる。

したがって、冬の安全対策では次の3点を判断基準にしたい。

  • 生態面:冬眠時期は個体差があるため、冬でもクマがいる可能性を考える。
  • 環境面:ドングリの豊凶だけでなく、住宅地や農地に食べ物が残っていないか確認する。
  • 安全面:地域の出没情報を優先し、山では遭遇を避ける行動を徹底する。

クマを遠ざけるために、冬眠を促すような行動を人間が取ることはできない。人間の生活圏に食べ物を残さず、クマが近づく理由を減らすことこそ、長期的に人とクマ双方の安全を守る現実的な方法だ。

【冬眠しないクマの理由と冬の出没】に関するよくある質問(FAQ)

Q1:クマは本当に冬眠しないことがある?
A1:ある。冬眠開始が遅れる個体、冬眠期間が短い個体、積雪期にも活動する個体などが確認されている。北里大学は2025年1月、八甲田山系で雪上を歩くツキノワグマを撮影している。ただし、雪上での撮影だけで冬眠を完全に放棄したとは判断できない。

Q2:暖冬になるとクマは冬眠しなくなる?
A2:暖冬によって活動時期が前後する可能性はあるが、暖冬だけが原因ではない。食物資源、脂肪の蓄積状態、地域環境なども関係するため、気温だけで冬眠の有無を予測することはできない。

Q3:ドングリが凶作だとクマは必ず人里に出没する?
A3:必ずではない。山の餌が少ない場合、早めに冬眠へ向かう個体もいる。一方、人里に柿や栗、生ゴミなどが残っていれば、食べ物を求めて接近する可能性がある。2026年の東京農工大学などの研究でも、人里に出没したクマが必ずしも栄養不足ではないことが示されている。

Q4:クマは何月から冬眠し、いつ目覚める?
A4:一般的には12月頃から冬眠し、3〜5月頃に活動を再開する。ツキノワグマは11月下旬から12月に冬眠を始める個体が多く、ヒグマは北海道で12〜3月頃に冬眠する。ただし、地域や個体によって違いがある。

Q5:冬眠中のクマは絶対に目覚めない?
A5:絶対ではない。クマの冬眠は完全に意識を失う状態ではなく、外部からの刺激などで覚醒することがある。冬眠穴やクマの痕跡を見つけても、近づいたり触れたりしないことが大切だ。

冬眠しないクマは、冬眠を完全にやめた特殊な個体だけを指すものではない。冬眠時期が遅れる、期間が短くなる、積雪期に活動するなど、さまざまな行動の違いが含まれている。

2025年の北里大学による雪上撮影は、積雪期にも活動するツキノワグマの存在を記録した。一方、2026年1月に公表された東京農工大学などの脂肪蓄積研究は、651頭の分析から、冬眠前後の脂肪の変化やドングリの豊凶が翌年の栄養状態にまで影響することを明らかにした。

さらに2026年秋の兵庫県や愛知県、北海道の調査からは、クマの餌となる木の実の状況が地域ごとに異なることも分かる。

今後も気候や森林環境の変化によって、クマの冬眠時期や人里への出没状況が変わる可能性はある。大切なのは「冬だからクマはいない」と決めつけず、地域の最新情報を確認すること。そして、柿や栗、生ゴミなどを適切に管理し、クマが人間の生活圏に近づく理由を減らすことだ。

クマの生態を正しく理解し、人間側の環境管理を徹底することが、冬の遭遇事故を防ぎ、人と野生動物が安全に暮らせる地域づくりにつながる。

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コンテンツディレクター 白石 結愛
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タレントの学歴・経歴・家族構成を公表資料と本人インタビューで確認し、推測を書かないことを徹底しています。

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