ボストン・レッドソックスで活躍する吉田正尚選手の筋肉は、プロ野球選手の中でも目を引く特徴の一つです。身長173cmに対して体重87kgというがっしりした体格に加え、強烈なフルスイングを支える上半身と下半身の筋力、安定した体幹が注目されています。しかし、その肉体は単純に筋肉を大きくするだけのトレーニングで作られたものではありません。
大きな転機となったのは、2017年の腰の手術と、ハンマー投げのアテネ五輪金メダリスト・室伏広治氏との出会いです。故障しにくい身体づくりから始まった取り組みは、個人に合わせたオーダーメイドの筋トレ、体幹強化、身体操作の改善へと発展しました。2026年の侍ジャパン公式プロフィールやレッドソックスでの最新成績も踏まえ、吉田正尚の筋肉の秘密とトレーニングの実態を解説します。
【筋肉の秘密】吉田正尚の肉体はなぜすごい?パワーと機能性の両立

吉田正尚選手の筋肉が注目される理由は、単に身体が大きいからではありません。打撃に必要なパワーを生み出しながら、身体全体を効率よく動かす能力を追求している点にあります。
173cmの身体から強烈な打球を生み出す仕組み吉田選手の公表身長は173cmです。MLBの強打者の中では比較的小柄な部類に入りますが、コンパクトに見える体格から強烈な打球を放ちます。
その背景にあるのが、上半身だけに頼らない全身の連動性です。
- 下半身:地面を踏み込んで生み出した力を打撃動作につなげる。
- 体幹:スイング中の姿勢を安定させ、身体の回転を効率よく伝える。
- 背中・肩周辺:バットを振る際の肩甲骨や胸郭の動きを支える。
- 腕・胸部:身体の回転によって生まれた力をバットへ伝える。
野球の打撃では、腕の筋力だけを強化しても十分ではありません。下半身から体幹、肩、腕へと力が伝わる動作が必要です。
吉田選手の身体づくりでは、筋肉の大きさだけでなく、各部位を適切なタイミングで働かせることが重視されています。
筋肉を大きくするだけではない機能性重視の肉体一般的なボディビルディングでは、筋肉の大きさや見た目のバランスが重要な評価対象になります。一方、野球選手に必要なのは、競技中に筋力を適切に発揮できることです。
例えば、強いスイングを繰り返すためには、瞬発力だけでなく、身体の回旋を制御する能力や柔軟性も必要になります。筋肉が硬くなり、関節の動きが制限されれば、かえってパフォーマンスを妨げる可能性があります。
吉田選手が室伏氏から学んだトレーニングにも、こうした身体操作の考え方が反映されています。
見た目の筋肉量を増やすことよりも、打球を飛ばすために必要な動作を改善し、年間を通して試合に出られる身体をつくること。それが吉田選手の肉体改造を理解する要点です。
【2017年の転機】腰の手術と室伏広治との出会いが肉体改造を変えた
吉田正尚選手が身体づくりを本格的に見直した背景には、プロ入り後に悩まされていた慢性的な腰痛があります。
オリックス時代の2016年、2017年は腰痛の影響もあり、それぞれ63試合、64試合の出場にとどまりました。強烈なスイングを持ち味とする一方で、身体への負担が大きな課題になっていたのです。
腰の手術を決断した2017年吉田選手は2017年11月、腰椎椎間板ヘルニアの手術を受けました。
それまでのように痛みを抱えながらプレーを続けるのではなく、長期的に活躍できる身体をつくるための決断でした。
同年12月には、脂肪を減らして筋肉量を増やすという肉体改造の方向性も明らかにしています。当時の身長は173cm、体重は87kgで、約4kgの減量を目安に身体を絞る考えを示していました。
室伏広治氏に自ら手紙を送り指導を依頼吉田選手のトレーニングを語るうえで欠かせない人物が、2004年アテネ五輪男子ハンマー投げ金メダリストの室伏広治氏です。
二人の関係は、吉田選手が室伏氏に手紙を送ったことから始まりました。面識のなかった相手に自ら指導を依頼するほど、当時の吉田選手は身体の問題を深刻に受け止めていたのです。
2017年1月には最初のトレーニング指導が行われています。その後、同年11月の手術を経て、身体の問題を改善する取り組みがさらに重要になりました。
2023年の文藝春秋のインタビュー記事では、室伏氏が吉田選手の姿勢について、胸が開き、腰椎が過度に反った状態だったと説明しています。バットを何度も振る動作によって腰に負担が蓄積することが課題でした。
そこで優先されたのが、筋力を増やすことよりも、腰に負担をかけにくい身体の使い方を身につけることでした。
室伏氏の指導で変わったトレーニングの考え方室伏氏との取り組みは、最初から高重量の筋トレを繰り返すものではありませんでした。
まずは故障の原因を改善し、その後、競技に必要な能力を段階的に高めるという方法です。
2018年には本格的な筋力トレーニングにも取り組み、胸椎周辺の柔軟性や腰痛の再発予防を意識した運動を実践。チューブやハンマーなど、一般的なウエイトトレーニングとは異なる器具も活用しました。
手術後の2018年、2019年にはNPB公式記録で2年連続143試合出場を記録しています。身体の状態を整えながら出場機会を増やしたことは、当初の目標に沿った大きな変化でした。
【筋トレメニューを解説】体幹・ハンマー・一本歯下駄を使う独自トレーニング
吉田正尚選手のトレーニングには、一般的な筋力強化とは異なる特徴があります。複数の筋肉を同時に働かせ、身体のバランスや動作の精度を高める運動が組み込まれていることです。
チューブトレーニングで胸郭と肩周辺の動きを改善室伏氏の指導で取り入れられた代表的な方法の一つが、チューブを使用するトレーニングです。
チューブは引っ張る方向や身体の姿勢によって負荷が変化します。肩や胸郭周辺の動きを意識しながら身体をコントロールする練習にも活用できます。
吉田選手の場合、胸椎周辺の柔軟性を高めることや、腰に過度な負担をかけない身体操作が意識されていました。
紙風船を使った体幹トレーニング室伏氏との取り組みで知られるのが、紙風船を使用した独特の体幹トレーニングです。
紙風船をつぶさないように押す動作などを通して、身体の中心を安定させながら力を加える感覚を養います。
単純に腹筋運動を繰り返すのとは異なり、身体の各部位を協調させることがポイントです。
野球のスイングでは、強い回転を生み出す一方で、上半身と下半身のバランスを保つ必要があります。こうした練習は、その動作を支える体幹のコントロールにつながります。
ハンマーを利用した瞬発力と身体操作の練習室伏氏らしい独創性が見られるのが、ハンマーを使ったトレーニングです。
2020年1月の日刊スポーツの報道では、約10kgのハンマーを振り下ろし、途中で静止させる運動が紹介されました。
この練習では、単に重いものを動かすだけではなく、動作を途中で制御することが重要になります。
身体を動かす能力と、動きを止める能力の両方を意識することで、力の発揮とコントロールを組み合わせたトレーニングになります。
一本歯下駄を使ったバランス強化2024年2月に紹介された沖縄での自主トレ「正尚塾」では、一本歯下駄を使用する様子も公開されました。
一本歯下駄は、一般的な靴と異なり、接地面が小さい構造になっています。そのため、使用時には姿勢や重心の位置を意識する必要があります。
吉田選手の自主トレ映像では、筋力トレーニングや体幹運動とともに、この器具を使った練習が確認されています。
ただし、一本歯下駄を履くだけで打撃力が向上するという単純な話ではありません。注目すべきなのは、筋肉を鍛えるだけでなく、身体の重心やバランスを意識する練習も取り入れていることです。
正尚塾は後輩選手と取り組む自主トレの場正尚塾は、吉田選手が後輩選手らと取り組む自主トレーニングとして知られています。
2024年のFull-Countによる取材では、吉田選手自身が組み立てるメニューに、筋力トレーニングと体幹トレーニングの両方が含まれていたことが紹介されました。
見どころは、単に重い重量を扱うことではなく、身体のバランスを整える運動も組み合わせている点です。
なお、公開された映像はトレーニングの一部であり、全メニューの種目、回数、重量、休憩時間まで明らかになっているわけではありません。
【プロフィールと関係性を整理】身長173cm・体重87kgと筋肉量の現在
吉田正尚選手の体格を確認する際に重要なのが、身長・体重の公式プロフィールと、実際の筋肉量を区別することです。
2026年の侍ジャパン公式プロフィールでは、吉田選手の身長は173cm、体重は87kgと掲載されています。
また、2023年のWBC代表プロフィールでは体重85kgでした。登録時期によって数値が異なるため、過去のデータを現在の体格として扱わないことが大切です。
吉田正尚の肉体改造に関する年表・関係者一覧| 時期・人物 | 出来事・関係 | 身体づくりへの意味 |
|---|---|---|
| 2016〜2017年 | オリックス時代に腰痛で出場機会が制限される | 故障予防と身体の見直しが課題になる |
| 2017年1月 | 吉田選手が室伏広治氏に指導を依頼し、トレーニング開始 | 姿勢や身体の使い方を改善する取り組みが始まる |
| 2017年11月 | 腰椎椎間板ヘルニアの手術 | 長期的にプレーするための身体づくりを重視 |
| 2018〜2019年 | オリックスで2年連続143試合出場 | シーズンを通じた稼働を実現 |
| 2020年 | 室伏氏によるハンマーやチューブなどの指導が報道される | 筋力と身体操作の両立を目指す |
| 2024年 | 沖縄で正尚塾を実施 | 体幹、筋力、バランスを組み合わせた自主トレ |
| 2026年1月 | 吉田選手が室伏氏との関係やオーダーメイドのメニューについて説明 | 個人の状態に合わせた継続的な指導 |
| 2026年 | 侍ジャパン公式プロフィールに173cm・87kgと掲載 | 現在の公表体格を確認できる基準 |
検索されることの多い疑問が、吉田選手の現在の筋肉量です。
しかし、2026年10月時点で、本人の正確な骨格筋量や体脂肪率を示す公式測定値は公表されていません。
公表されている87kgは体重であり、筋肉だけの重量ではありません。筋肉、脂肪、骨、水分などを含めた身体全体の重さです。
2017年には脂肪を減らしながら筋肉量を増やしたいという考えが報道されましたが、その目標が現在どの程度達成されているのかを数値で判断することはできません。
一方、侍ジャパン公式プロフィールを比較すると、2023年のWBC登録時は85kg、2026年のWBC登録時は87kgです。
この2kgの差は登録プロフィール上の体重の違いを示していますが、そのまま筋肉が2kg増えたことを意味するわけではありません。
室伏広治氏と吉田正尚選手の関係は現在も続いている2026年1月26日付のスポニチアネックスでは、吉田選手がアンジャッシュ渡部建さんのYouTube番組「渡部のサシ飲み」に出演し、室伏氏との関係を振り返ったことが報じられました。
吉田選手は、室伏氏に作ってもらう筋トレメニューについて、オーダーメイドに近いものだと説明しています。また、現在も定期的に指導を受けていることを明かしました。
これは、特定の固定メニューを何年も繰り返すのではなく、身体の状態や課題に応じて内容を調整する考え方です。
室伏氏の知識や人柄が、トレーニング技術だけでなく、吉田選手の考え方にも影響を与えてきたことがうかがえます。
【2026年レッドソックス最新情報】筋肉とパフォーマンスの現在地
2026年の吉田正尚選手は、レッドソックスで指名打者を中心に出場しました。
MLB公式プロフィールによる2026年レギュラーシーズンの成績は、87試合出場、263打数72安打、打率.274、5本塁打、28打点、OPS.746です。
夏場に調子を上げるも左太もも裏を負傷2026年8月15日(日本時間16日)のパイレーツ戦で、吉田選手は二塁打を放った際に左太もも裏を負傷しました。
翌16日には10日間の負傷者リスト入り。8月18日にはMRI検査の結果を受け、レッドソックスのチャド・トレーシー監督代行が重度の筋損傷であることを説明しました。
その後も復帰には至らず、2026年のレギュラーシーズンは87試合の出場で終了。レッドソックスもワイルドカードシリーズで敗退し、吉田選手はポストシーズンに出場しませんでした。
2026年の成績と身体づくりをどう評価するべきか2026年の成績を見ると、打率.274、OPS.746という数字を残しています。特に夏場には打撃状態を上げていた時期もありました。
一方、シーズン終盤の負傷は、長期間にわたって試合に出場するためのコンディション管理が引き続き課題であることを示しています。
ただし、今回の左太もも裏の負傷を、筋肉の鍛え方や室伏氏のトレーニングと直接結びつける根拠はありません。腰の手術後に取り組んできた身体づくりと、2026年のハムストリングの負傷は分けて考える必要があります。
今後注目したいのは、負傷した部位の回復だけでなく、シーズンを通して打撃に必要な出力を維持できるかという点です。
吉田選手の身体づくりは、筋肉を増やす段階から、長期的な競技パフォーマンスを維持する段階へと進んでいます。
【プロの結論】吉田正尚の筋肉から学べる本当の肉体改造とは
吉田正尚選手の筋肉の秘密を理解するうえで、最も重要なのは、筋肉の大きさだけを評価基準にしないことです。
2017年の腰の手術を経て、室伏広治氏と取り組んできた身体づくりは、故障の原因を改善することから始まりました。その後、筋力、体幹、柔軟性、身体のバランスを組み合わせたトレーニングへと発展しています。
この過程から読み取れるのは、アスリートにとって筋肉は単独で存在するものではなく、競技動作の中で機能してこそ価値を発揮するということです。
吉田正尚のトレーニングを一般の人が参考にする場合吉田選手の方法を参考にする場合、取り入れたい考え方は次の3つです。
- 目的を明確にする:筋肉を大きくしたいのか、身体の安定性を高めたいのか、競技能力を向上させたいのかを整理する。
- 身体の動きを優先する:重量や回数だけでなく、正しい姿勢や動作のコントロールを重視する。
- 回復もトレーニングの一部と考える:疲労や痛みを無視して運動量を増やさず、休息やコンディショニングを組み込む。
特に、腰痛などの既往歴がある人は、吉田選手のメニューをそのまま再現するのではなく、医療専門職やトレーニング指導者に相談しながら運動内容を決めることが大切です。
一本歯下駄や重いハンマーを使う運動も、誰にでも適しているわけではありません。道具の珍しさではなく、自分の目的と身体能力に合っているかどうかを判断基準にするべきです。
吉田選手の肉体改造から得られる最大の教訓は、強い身体とは単に大きな筋肉を持つ身体ではないということです。必要な力を発揮し、動きを制御し、故障を防ぎながら競技を続けられる身体こそ、野球選手にとって理想的な肉体なのです。
吉田正尚の筋肉に関するよくある質問(FAQ)
Q1:吉田正尚の現在の筋肉量は何kgですか?
A1:正確な筋肉量や骨格筋量は公表されていません。2026年の侍ジャパン公式プロフィールでは体重87kgとされていますが、体重と筋肉量は別の数値です。
Q2:吉田正尚の筋トレメニューは室伏広治が作っているのですか?
A2:2026年1月のスポニチ報道によると、吉田選手は室伏氏からオーダーメイドに近い筋トレメニューを作ってもらい、現在も定期的に指導を受けています。身体の状態や課題に応じて内容を調整する取り組みです。
Q3:吉田正尚が一本歯下駄を使う理由は何ですか?
A3:2024年の正尚塾の自主トレ映像では、一本歯下駄を使用する様子が紹介されました。身体の重心やバランスを意識する運動の一環として注目されています。ただし、使用するだけで打撃力が向上するという確立された効果を示すものではありません。
吉田正尚選手の筋肉は、173cm・87kgという体格だけでは語り尽くせません。2017年の腰の手術を転機として、室伏広治氏とともに身体の使い方を見直し、筋力と体幹、柔軟性、バランスを組み合わせたトレーニングに取り組んできました。
チューブ、ハンマー、紙風船、一本歯下駄など、独特なトレーニング方法が注目されますが、その根底にあるのは故障しにくく、野球の動作に適した身体をつくるという考え方です。
2026年はレッドソックスで87試合に出場し、打率.274、5本塁打、28打点を記録した一方、左太もも裏の負傷によってシーズン終盤を欠場しました。今後はコンディションを整え、年間を通じて安定したパフォーマンスを発揮できるかが焦点になります。
吉田正尚選手の肉体改造が教えてくれるのは、筋肉を増やすことそのものがゴールではないという事実です。競技に必要な力を引き出し、身体を自在に操り、長く活躍するための機能性こそが、その筋肉の本当の価値なのです。
主な確認資料: 侍ジャパン公式選手プロフィール、MLB公式選手プロフィール、スポニチアネックス(2026年1月26日)、文藝春秋(2023年8月)、日刊スポーツ(2017年・2020年)、Full-Countの正尚塾取材(2024年)。