「伯方の塩はどこの塩?」「伯方島で採れた海水から作られているの?」と疑問に思ったことはないだろうか。テレビCMでもおなじみの「伯方の塩」は、愛媛県今治市に製造拠点を持つ日本の塩ブランドだ。しかし、実際の原料にはメキシコまたはオーストラリアから輸入した天日塩田塩が使われている。加えて、日本の瀬戸内海の海水を組み合わせ、国内工場で独自の工程を経て製造されている。
2026年11月現在、伯方塩業株式会社の公式情報によると、製品の原産国は日本。原料の産地は海外と日本にまたがり、製造場所は愛媛県今治市の伯方工場と大三島工場だ。つまり、原料の産地・製品の原産国・実際の製造場所は、それぞれ異なる意味を持っている。
【結論】伯方の塩はどこの塩?原産国は日本、原料は海外と国内の組み合わせ

最初に答えを整理すると、伯方の塩の製品としての原産国は日本である。ただし、原料となる塩のすべてが日本産というわけではない。
伯方塩業株式会社の公式FAQでは、伯方の塩の原産国を日本と説明している。原料にはメキシコまたはオーストラリアから輸入した天日塩田塩を使い、それを日本の海水で完全に溶かして、砂や泥などを取り除いた濃い塩水をつくる。その後、日本国内の工場で煮詰め、塩を結晶化させる。
2026年10月1日付の同社の公式情報でも、天日海塩の輸入先はメキシコまたはオーストラリア、海水の取水場所は大三島工場沖と明記されている。したがって、海外産の原料を使っていることと、日本産の製品であることは矛盾しない。
ここで押さえておきたいのは、次の3つを混同しないことだ。
- 原料の産地:塩の原料となる天日塩田塩を採取・生産した国。
- 製品の原産国:製品の内容に実質的な変更をもたらす製造・加工が行われた国。
- 製造場所:実際に製品を加工・製造している工場の所在地。
伯方の塩の場合、海外から輸入した天日塩田塩と国内の海水を原料に、愛媛県今治市の工場で製造している。この構造を理解すれば、「外国産の塩なのに、なぜ原産国が日本なのか」という疑問も解消できる。
【名前の由来】伯方の塩はなぜ伯方島?1973年の誕生に隠された歴史
伯方の塩という名前を聞くと、愛媛県今治市の伯方島で採れた塩を想像する人も多い。しかし、ブランド名の由来は単純な採取地の表示ではない。
その背景には、1970年代に起きた日本の製塩制度の転換と、昔ながらの塩田を残したいと願った消費者たちの運動がある。
1971年、従来の塩田製塩が大きく変わる1971年に塩業近代化臨時措置法が成立すると、日本の製塩方法は大きく変化した。従来の塩田を利用した製塩が廃止され、イオン交換膜を利用する製法へと移行したのである。
当時、塩は国の管理下にあり、消費者が自由に製造・販売できる状況ではなかった。こうした変化を受け、従来の塩田塩を残してほしいと願う消費者たちが自然塩存続運動を展開した。
伯方塩業株式会社の公式「伯方の塩誕生物語」によると、この運動は全国に広がり、短期間で5万人の署名を集めたという。
塩田そのものを復活させるという当初の願いは実現しなかったが、消費者が自分たちの手で、昔ながらの塩田塩を手本とした塩をつくる道が開かれた。
1973年に伯方塩業株式会社が誕生1973年8月13日、自然塩存続運動を行った消費者団体を母体として、伯方塩業株式会社が創業した。
創業時には、1口10万円の無担保・無保証・無期限という独特の条件で出資を募り、「塩による出世払い」という仕組みで資金を集めた。公式の誕生物語によれば、数百万円の出資が寄せられたという。
その後、伯方島で塩づくりに携わっていた人々の協力を得ながら製法を研究。1973年12月に「伯方の塩」が誕生した。
商品名には、伯方島の塩田を復活させたいという多くの人々の願いが込められている。つまり、伯方の塩は単なる地名ブランドではなく、日本の伝統的な塩づくりを残そうとした消費者運動から生まれた商品なのだ。
なお、1973年の創業当初は、国が輸入していたメキシコ・オーストラリア産の天日塩田塩を使うことや、平釜を使用することなどの生産上の制約が設けられていた。現在の原料構成にも、こうした誕生当時の歴史がつながっている。
【原料の産地】メキシコ・オーストラリアの天日塩田塩と日本の海水
伯方の塩の原料は、大きく分けて海外産の天日塩田塩と日本の海水の2種類だ。
海外産の天日塩田塩は、太陽熱と風という自然エネルギーを利用して結晶化させた塩である。一方、日本の海水は、伯方塩業株式会社の大三島工場沖から取水している。
メキシコ産:ゲレロネグロ塩田メキシコの天日塩田塩について、伯方塩業の公式資料では、バハ・カリフォルニア・スル州のゲレロネグロ塩田が紹介されている。
この塩田は、世界自然遺産にも登録されているセバスティアン・ビスカイノ湾に面した広大な施設だ。公式説明では、その面積は約486平方キロメートル。海水を塩田に引き込み、太陽熱と風を利用して約2年かけて塩を結晶化させる。
大量の海水を自然の力で濃縮できることが特徴で、伯方の塩の原料となる天日塩田塩の供給地の一つとなっている。
オーストラリア産:シャークベイ塩田もう一つの原料供給地が、オーストラリア西部のシャークベイ塩田だ。
こちらも自然環境に恵まれた海域に位置し、公式資料によると面積は約70平方キロメートル。シャーク湾の海水を引き込み、約2~3年かけて太陽熱と風によって塩を結晶化させる。
メキシコ産とオーストラリア産は、いずれも自然エネルギーを利用してつくられる天日塩田塩であり、伯方の塩では両国のいずれかから輸入した原料を使用している。
日本の海水:大三島工場沖から取水海外産の天日塩田塩だけで製品が完成するわけではない。もう一つの重要な原料が、日本の瀬戸内海の海水である。
特に注目したいのが、2026年10月1日付の伯方塩業株式会社の公式情報だ。そこには、伯方の塩に使用する海水について、大三島工場沖から取水していると記載されている。
つまり、伯方の塩は、海外で太陽熱と風を利用してつくられた塩を、日本の瀬戸内海の海水で溶かして再加工する製品なのだ。
同社の説明によれば、輸入天日塩田塩は工業用塩として製造されるため、にがりがほとんど含まれていない。また、屋外で結晶化するため砂や泥などが混入することもある。
そこで日本の海水で完全に溶かし、ろ過する。これにより、不純物を取り除きながら、海水由来のにがりを含む濃い塩水をつくる仕組みになっている。
【製造場所を比較】伯方工場と大三島工場はどこにある?
伯方の塩を実際につくっている場所は、愛媛県今治市にある2つの工場だ。
一つはブランド名の由来にもなった伯方島の伯方工場。もう一つは、しまなみ海道の観光ルートにも位置する大三島工場である。
伯方塩業株式会社の公式会社概要と2026年の工場所在地情報を整理すると、次のようになる。
| 施設・関連要素 | 所在地・産地 | 主な役割・関係 |
|---|---|---|
| 伯方塩業株式会社 | 愛媛県松山市・今治市 | 伯方の塩を製造・販売する企業 |
| 伯方工場 | 愛媛県今治市伯方町木浦甲841 | 伯方島にある製造拠点。会社の原点となった工場 |
| 大三島工場 | 愛媛県今治市大三島町台32 | メイン工場。製造工程の見学施設を併設 |
| 天日塩田塩 | メキシコまたはオーストラリア | 太陽熱と風で結晶化させた輸入原料 |
| 海水 | 愛媛県今治市・大三島工場沖 | 天日塩田塩を溶かすための国内原料 |
| 製品の原産国 | 日本 | 国内で加工・製造された完成品 |
伯方工場の所在地は、愛媛県今治市伯方町木浦甲841。伯方塩業株式会社の公式会社概要にも掲載されている住所だ。
伯方島は、しまなみ海道を構成する島の一つ。伯方の塩という商品名の由来となった場所であり、同社の公式サイトでも、会社の原点として紹介されている。
現在も伯方工場では塩づくりが行われている。したがって、伯方の塩は名前だけを伯方島から借りた商品というわけではない。実際に伯方島にも製造拠点が存在する。
大三島工場:メイン工場で製造工程を見学できるもう一つの製造拠点が、愛媛県今治市大三島町台32にある大三島工場だ。
こちらは伯方塩業株式会社がメイン工場として紹介している施設で、伯方の塩ができるまでの工程を見学できるコースを備えている。
見学では、天日塩田塩を海水に溶かす工程、ろ過、煮詰め、自然乾燥などを確認できる。敷地内には昔の塩づくりを学べる塩田の再現施設もあり、製塩の歴史を知ることもできる。
今治市の観光情報でも、大三島工場は伯方の塩の製造工場として紹介されている。製造工程を実際に見てみたい人にとっては、こちらが特におすすめの施設だ。
なお、工場見学は製造スケジュールや定期点検によってラインが停止する場合がある。見学を目的に訪問する際は、公式の見学カレンダーを確認しておきたい。
【製造工程】伯方の塩はどう作られる?溶解・ろ過から自然乾燥まで
伯方の塩の特徴は、海外産の天日塩田塩をそのまま袋詰めするのではなく、日本の海水を使って溶かし、国内で再結晶させる製法にある。
伯方塩業株式会社の大三島工場見学案内によると、基本的な製造工程は次の5段階に分けられる。
1. 天日塩田塩を海水に溶かす最初に、メキシコまたはオーストラリアから輸入した天日塩田塩を、日本の海水で完全に溶かす。
天日塩田塩には、屋外で結晶化する過程で砂や泥などが混入することがある。そのため、海水に溶かして濃い塩水をつくる工程が必要になる。
2. ろ過して不純物を取り除く溶かした塩水をろ過し、砂や泥などの不要な物質を取り除く。これにより、次の結晶化工程に使うきれいな濃い塩水ができる。
ここで日本の海水を使うことが、伯方の塩の原料構成における要点だ。
3. 釜で数時間かけて煮詰めるろ過した濃い塩水を釜に入れ、数時間かけて煮詰める。水分が蒸発するにつれて塩の結晶ができてくる。
結晶した塩は水切りカゴに入れ、余分な水分を取り除く。
4. 屋内で数日間かけて自然乾燥させる次の工程は、伯方の塩の品質を特徴づける自然乾燥だ。
同社の公式説明では、にがりをほどよく残すため、屋内で数日間かけてゆっくり乾燥させている。
短時間で水分を取り除くのではなく、時間をかけて乾燥させることにより、伯方の塩らしい風味や仕上がりにつなげている。
5. 選別・検査・袋詰め乾燥した塩は、そのまま商品になるわけではない。
フルイ機、除鉄機、色彩選別機などを使って異物を取り除き、袋詰め後にはオートチェッカーで重量や金属異物の有無を確認する。
加えて、最後は人の目による目視検査を実施。異物や汚れがないかを確認してから箱詰めされ、出荷される。
このように、輸入原料を日本の海水で溶かすだけではなく、ろ過・結晶化・自然乾燥・選別・検査という複数の工程を経て、最終製品の伯方の塩が完成する。
【プロの結論】原産国・原料の産地・製造地は何が違う?よくある誤解を整理
伯方の塩について調べる際に最も混乱しやすいのが、「原産国」と「原料の産地」、そして「製造地」の違いだ。
これらは似ているようで、示している情報は異なる。商品の表示を正しく読み取るためには、それぞれを分けて考える必要がある。
原産国は完成した商品の内容に関係する情報消費者庁の「食品表示基準Q&A」では、製品の原産国について、商品の内容に実質的な変更をもたらす行為が行われた国を基本的な判断基準として説明している。
単に輸入品にラベルを貼ったり、包装したりするだけでは、原産国が変わるわけではない。
伯方塩業株式会社は、輸入天日塩田塩を日本の海水で完全に溶かし、ろ過して濃い塩水をつくる製造工程を踏まえ、伯方の塩の原産国を日本と説明している。
「伯方の塩は外国産」という理解は正確なのか原料の一部が外国産であることは事実だ。しかし、完成した製品そのものがメキシコ産やオーストラリア産という意味ではない。
一方で、「伯方の塩は日本の海水だけでつくられている」という理解も正確ではない。実際には輸入天日塩田塩を原料の一つとして使っている。
正確に表現するなら、メキシコまたはオーストラリア産の天日塩田塩と、日本の瀬戸内海の海水を原料に、愛媛県今治市の工場で製造される日本原産の塩ということになる。
なぜ現在も輸入天日塩田塩を使うのか1973年の創業時には、当時の制度上の制約から輸入天日塩田塩を使う必要があった。しかし、現在も海外産の原料を使い続けている理由は、それだけではない。
伯方塩業株式会社は公式FAQで、天日塩田塩を使う理由として、安定した品質の塩をできるだけ手頃な価格で提供することを挙げている。
また、海水を直接煮詰めて塩をつくる場合には多くのエネルギーが必要になる。太陽熱や風を利用して結晶化した天日塩田塩を原料の一つとすることで、海水をそのまま煮詰める製法と比べてCO2排出量を低減できるという。
つまり、現在の製法には、創業当初の歴史だけでなく、品質の安定性、価格、製造時のエネルギー効率という複数の理由が関係している。
購入するときに確認したい3つの判断基準塩を購入する際は、商品名やブランド名だけで産地を判断しないことが大切だ。
- 原料の産地を重視する人:メキシコ産・オーストラリア産など、原料となる塩の産地を確認する。
- 国内製造を重視する人:完成品の原産国や製造者、製造場所を確認する。
- 日本の海水を使った製法を重視する人:原料に使う海水の採取場所や、溶解・再結晶の工程を確認する。
伯方の塩は、国内工場で製造された塩を選びたい人には選択肢の一つとなる。一方、日本の海水だけを原料とした塩を探している人にとっては、輸入天日塩田塩も使われている点が購入前の確認事項になる。
大切なのは、外国産の原料を使っているから品質が低い、日本国内で製造しているから原料もすべて国産、といった単純な判断をしないことだ。原料、製法、製造場所をそれぞれ確認することが、商品を正しく選ぶための基本となる。
【伯方の塩はどこ?】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:伯方の塩は愛媛県の伯方島で採れた塩ですか?
A1:伯方島で採れた海水だけからつくられる塩ではありません。メキシコまたはオーストラリアの天日塩田塩と、大三島工場沖から取水した日本の海水を原料にしています。伯方島には伯方工場があり、現在も塩づくりが行われています。
Q2:伯方の塩の原産国は日本ですか、外国ですか?
A2:伯方塩業株式会社の公式FAQでは、製品の原産国は日本と説明されています。ただし、原料の天日塩田塩はメキシコまたはオーストラリアから輸入しています。
Q3:伯方の塩はどこの工場で製造されていますか?
A3:愛媛県今治市の伯方工場と大三島工場が製造拠点です。伯方工場は今治市伯方町木浦甲841、大三島工場は今治市大三島町台32にあります。
Q4:伯方の塩に日本の海水は使われていますか?
A4:使われています。2026年10月1日付の公式情報では、大三島工場沖の海水を取水していると説明されています。輸入天日塩田塩を日本の海水で溶かし、ろ過して濃い塩水をつくります。
Q5:伯方の塩の名前はなぜ伯方島から付けられたのですか?
A5:伯方島の塩田を復活させたいという多くの人々の願いを象徴する名前だからです。1971年の製塩制度の転換を背景にした消費者運動から生まれ、1973年12月に商品が誕生しました。
Q6:伯方の塩の製造工程は見学できますか?
A6:愛媛県今治市大三島町台32にある大三島工場で見学できます。溶解・ろ過、煮詰め、自然乾燥、選別などの工程を見学できるほか、昔の塩田を再現した施設もあります。製造ラインの稼働状況や休業日は訪問前に公式情報で確認してください。
伯方の塩は、愛媛県今治市に製造拠点を置く伯方塩業株式会社がつくる日本の塩ブランドだ。製品の原産国は日本だが、原料にはメキシコまたはオーストラリアから輸入した天日塩田塩も使われている。
加えて、大三島工場沖の瀬戸内海の海水で天日塩田塩を溶かし、ろ過・煮詰め・自然乾燥・選別などの工程を経て製品に仕上げる。
製造場所は、愛媛県今治市の伯方工場と大三島工場。伯方島はブランド名の由来となった場所であり、大三島工場は製造工程を見学できるメイン工場として知られている。
2026年現在も、伯方の塩には1971年の塩田存続運動から続く歴史と、海外の天日塩田塩、日本の海水、愛媛県の製造技術が結びついている。
「どこの塩か」を正しく理解するには、原産国・原料の産地・製造場所の3つを分けて考えることが重要だ。 伯方の塩は、単純に伯方島産でも外国産でもない。海外の原料と瀬戸内海の海水を組み合わせ、日本の工場で製造されるという独自の背景を持つ商品なのである。
主な確認資料(2026年11月時点)
- 伯方塩業株式会社「よくある質問」「伯方の塩誕生物語」
- 伯方塩業株式会社「会社概要」「工場見学のご案内」
- 伯方塩業株式会社「当社商品 放射能の検査結果について」(2026年10月1日掲載情報)
- 消費者庁「食品表示基準Q&A」(原産国の考え方) (出典: 伯方 の 塩 どこ(Yahoo!ニュース))